種子は砂じょうではない
砂じょうは果肉を作る器官で、種子は次世代につながる器官です。種子が多いか少ないかと、果肉の成分がどのように変わるかは、別々に測って初めて比較できます。
種の有無と果実品質
土佐文旦の有核果・無核果を比較したR03は、温室での成熟期の品質を扱う研究です。種子の有無だけで、あらゆる条件の甘さ・栄養・価値を決める資料にはしません。受粉と自家不和合性の章と合わせて読みます。
中心の組織を調べるとき
「中心の白い部分」という記録だけでは、果軸周辺・膜・維管束などの採取範囲が曖昧になります。顕微鏡像を示す場合は、断面の向きと採取位置をセットにするのがこの図書館の編集方針です。
本版には、土佐文旦の種皮・胚・中心組織を自園試料で顕微鏡計測したデータはありません。計測値のない部分を模式図の数字で補いません。
写真で見る
2月16日の実写:種子・中心部・白い果皮を見分ける

2025年2月16日9:49:51撮影。2つの断面を並べ、中心付近の種子、放射状の房、外周の白い果皮を観察できます。撮影日は収穫日を示しません。種の総数や果皮の厚さを測定した写真ではありません。
2つの輪切りでは、白い中心部の周囲に、切断面を見せた種子が並んでいます。その外側に果肉の入った房が放射状に広がり、さらに外側を白い果皮が囲んでいます。種子の輪郭と果肉の細長い粒を、同じ画面で見分けるための写真です。
| 観察する場所 | 写真で見る特徴 |
|---|---|
| 種子 | 中心に近い場所に並ぶ、輪郭のはっきりした白色から淡色の部分。切る位置によって断面の形が変わります。 |
| 果実の中心部 | 断面の中央に集まる白い組織。外周の白い果皮とは位置が違います。 |
| 房と果肉 | 中心から外へ区切られた房と、その中の砂じょうの集まり。 |
| 白い果皮 | 果肉の外側を囲む厚い層。外表面の黄色い部分と区別して観察できます。 |
切断面に見える種子の数は、果実全体の種子数とは限りません。尺度が写っていないため、厚さや直径の数値は付けていません。左右の断面が同じ果実から切り分けたものかは、撮影記録だけでは照合していません。撮影年の違う2026年4月の断面や9月の摘果果実とは、同一個体の変化として比較しません。
2025年2月16日撮影。種子、中心部、白い果皮の位置関係を観察できます。
この章の根拠・さらに詳しく
種子の成分を部位ごとに読む
高知県土佐市から農園直送公式通販で土佐文旦を見る →土佐文旦1個の中で、皮・膜・砂じょう・種子は何割か
施設栽培の7年生土佐文旦を調べた1993年の研究から、果実の各部位の重量割合(%)を抜粋しました。無核区5樹と、水晶文旦の花粉を受粉した有核区5樹の比較です。
| 区分 | 果皮 | 房の膜 | 砂じょう | 種子 | 果心 |
|---|---|---|---|---|---|
| 無核区 | 41.2 | 4.6 | 53.6 | ― | 0.6 |
| 有核区 | 35.7 | 5.8 | 52.7 | 4.8 | 1.0 |
無核区は種子がない分、すべて果肉になるわけではなく、果皮の割合が大きい結果でした。砂じょうの割合は53.6%と52.7%です。果皮欄は白い綿だけを分離した値ではありません。品種名だけで食べられる割合を固定せず、受粉、樹齢、成熟段階などの条件も付けて比較します。
土佐文旦の種なし化:小さな不完全種子も数える
同じ学位論文要約では、受粉用花粉の性質を利用すると完全種子を減らせる一方、小さな不完全種子は残ることが示されています。種子の数だけでなく、大きさと硬さ、果実の小玉化を一緒に評価する必要があります。
虫媒受粉を防ぐ試験では、樹上に有核果が混じると種なし果との競合が生じました。種なし果生産では葉果比50でも慣行並みの収量を得た条件がありますが、一般の有核土佐文旦の摘果基準を50へ変更する根拠にはなりません。
土佐文旦×水晶文旦から得られた三倍体・異数体
2000年の研究は、二倍体の土佐文旦を母親、水晶文旦を父親として交配し、不完全種子の重さと実生の染色体数を調べました。61〜180mgの種子から得た128個体は、二倍体109、三倍体8、四倍体3、異数体8でした。
胚を培養して育てる方法は、この小さな種子から実生を得るのに有効でした。128個体は特定の種子重量群から選んだ集団で、普通に収穫した全種子の発生割合ではありません。子に三倍体が得られることと、土佐文旦・水晶文旦の親樹自体が三倍体であることは別です。
水晶文旦の後代で調べられた、種子発育の止まり方
2009年の組織研究に使われたBu1-7は、水晶文旦の自然交雑実生です。これにサザンイエローを交配したBSY後代などを調べ、無核紀州に由来する種なし性を追っています。水晶文旦そのものが無核紀州型の無核品種という意味ではありません。
受粉後6〜26週の観察では、種なし系統に未熟で柔らかい種皮を持つ小さな「type A seed」が見られ、多くは接合子・前胚の段階で発育が止まりました。胚乳の退化が主因とは認められず、母体側の種皮組織の関与が考察されています。未受精胚珠、受精後に発育を止めた種子、充実した種子を分けて数えることで、種なし化の仕組みを詳しく比較できます。
根拠・原資料:Yamasakiほか(2009)|Characteristics of Arrested Seeds in Mukaku Kishu-type Seedless Citrus
日本・土佐文旦:受精しないことと、途中で種子が退化すること
区分:日本 / 条件付きの研究結果
同追跡報告の組織観察では、不活化花粉を受粉した土佐文旦でも胚乳の初期発達が見られ、その後の発達段階で胚珠組織が退化したと説明しています。報告ではこの経路を偽単為結果として整理しています。
「種なし」という果実の見た目から、受粉も受精も全く起こらなかったとは判断できません。花粉処理、三倍体、遺伝的な種子退化は別々に読む必要があります。水晶文旦後代の無核性研究とも、材料と退化する時期を照合できます。






